ゴールドウィングに搭載されるダブルウィッシュボーンとは?
2018年にホンダのゴールドウィングがモデルチェンジしましたが、サスペンションに「ダブルウィッシュボーン」という珍しい機構を採用しています。
主に自動車に使われるサスペンション構造で、クラウンやアルファードなどの高級車に装備されていますね。
ゴールドウィングはホンダのフラッグシップですから、バイクとしては珍しく高級なサスペンションを採用したということです。従来のテレスコピックと比べても大きな違いがあるので、知識として知っておくと良いでしょう。
ここでは、ダブルウィッシュボーン方式について解説をしていきます。
目次
ダブルウィッシュボーンとは何か?
ダブルウィッシュボーンとは、2組のアームでタイヤを支える構造のサスペンションのことです。鳥の胸骨(WishBone)に似ていることから、こういった名前が付けられていますね。
従来のテレスコピック方式だと、操縦と衝撃吸収の2つの働きを2本のフロントフォークで行う仕組みでした。
しかし、ダブルウィッシュボーンでは、操縦と衝撃吸収を独立して行う構造となっており、圧倒的に乗りやすさが向上しています。
また、フロント周りを小さくまとめることができるので、見た目もスッキリとした印象になりますね。
ゴールドウィングは、350kgを超えるほどの大柄なボディなので、ダブルウィッシュボーンを採用することで、コンパクト化に成功しました。
ダブルウィッシュボーンのメリット
自動車でも高級車にしか装備されていない機構ですが、バイクに採用することで色々なメリットがあります。主なメリットは、以下の通りですね。
- 路面からの衝撃がハンドルに伝わりにくい
- ステアリングフィールの向上
- 全長を短くすることで取り回しが良くなる
- 耐久性に優れている
路面からの衝撃がハンドルに伝わりにくい
操縦と衝撃吸収が独立した軸となっているので、ハンドルへの振動が30%も低減しています。路面の状態が悪くても振動を感じることが少ないので、疲労感も軽減されるでしょう。
特に、ゴールドウィングはツアラーバイクなので、長距離ツーリングを快適に過ごせることが求められます。衝撃の体感が少なくなったことで、先代モデルよりも明らかに快適性が向上しました。
ステアリングフィールの向上
ダブルウィッシュボーンでは、摺動抵抗が少ないというメリットもあります。摺動抵抗とは、フロントフォークがストロークする際の抵抗のことです。
従来のテレスコピック方式では、フロントフォークが衝撃吸収とホイール支持の2つの役割を担っていました。なので、しなりながらストロークするという状況になるわけです。
そこに抵抗が生じるため、ステアリングのフィーリングが悪くなってしまいます。
一方、ダブルウィッシュボーンだと、衝撃吸収とホイール支持は別々の軸が行っています。なので、サスペンションに伸縮方向以外の力が掛からなくなり、摺動抵抗が非常に少なくなりますね。
これにより、ステアリングフィールが向上しています。
全長を短くすることで取り回しが良くなる
ゴールドウィングにダブルウィッシュボーンを採用する最大の理由として、フロント部分の短縮だとされています。
ホイールがほぼ垂直にストロークする構造なので、フレームとホイールの空間を狭くすることができるわけです。これによって、全長をギリギリまで短くすることができます。
テレスコピック方式だと斜めにスクロールするために、フレームとホイールには一定の空間が必要となります。なので、全長が長くなって扱いづらいという欠点があったんですね。
ダブルウィッシュボーンでは、そういった点が改善されているので、取り回し性が大幅に向上しています。
耐久性に優れている
テレスコピックフォークは、定期的にオイル交換が必要となりますし、オイルシールが劣化すればオーバーホールしなくてはいけません。ちゃんと管理をしていないと、オイル漏れが起きることもあります。
一方、ダブルウィッシュボーンでは、衝撃吸収と操縦が独立した構造になっているので、部品にかかる負荷が少なくなって耐久性に優れています。
バネ式のサスペンションなのでオイル交換は不要ですし、メンテナンスサイクルが長いというメリットがありますね。
ダブルウィッシュボーンのデメリット
かなり高性能のサスペンションですが、ダブルウィッシュボーンにもデメリットが少なからず存在します。主なデメリットは、次の通りですね。
- 重量が重くなってしまう
- 構造が複雑なのでコストが高くなる
重量が重くなってしまう
テレスコピックフォークよりも部品が多くなるので、重量は重くなってしまいます。そのため、サーキットや峠などでのスポーツ走行では、フットワークが重くなってしまうでしょう。
なので、スーパースポーツなどでは採用されず、ゆったりと走るツアラーバイクに適したサスペンションだといえますね。
構造が複雑なのでコストが高くなる
最も大きなデメリットは、やはりコスト面についてです。自動車でも高級車にしか採用されませんし、バイクにおいては世界的にも数車種しかダブルウィッシュボーンを採用した例はありません。
その理由は、コストが高すぎるからですね。扱う部品点数が多いですし組み立てにも手間が掛かってしまい、普通のバイクでは採算を取ることができないでしょう。
ゴールドウィングはホンダのフラッグシップですし、300万円という高額な価格なので、コストがかかってもダブルウィッシュボーンを採用したようです。
超高級なサスペンションなので、ミドルクラスのバイクでは装備するのは不可能だといえます。
以上、ダブルウィッシュボーンのメリット・デメリットを紹介しました。
バイクに採用されることは少ないですが、圧倒的に乗り心地が良いために今後は装備する車種が増えるかもしれません。ソファに座っているような感覚で乗れるので、一度は体感してみてください。