最新バイクに搭載されているIMU(慣性計測装置)とは何か?
CBR1000RRやYZF-R1、ニンジャZX-10Rなど、最新のスーパースポーツにはIMUという電子制御システムが搭載されています。これは、慣性計測装置のことで、走行中の車体の姿勢を正確に計測する装置です。
このデータを基に、トラクションコントロールやウイリーコントロールなどの制御が行われます。なので、バイクの制御システムが稼働するために、絶対に必要となる情報となるわけですね。
ここでは、IMUの仕組みについて詳しく解説をしていきます。
IMU(慣性計測装置)とは?
慣性計測装置と聞くと難しく感じるかもしれませんが、簡単に言ってしまうとバイクの姿勢を感知するセンサーのことです。
最新バイクに搭載される電子制御を作動させるためには、現在のバイクがどんな状況にあるのかを正確に知らないといけません。
たとえば、同じ道路を走るにしても、路面が濡れていたり凍結していると、バイクの挙動は変わってきますよね。ライダーが気付かないレベルの細かな挙動をセンサーで感知することで、事故を防いで安全に走行できるわけです。
そのために使われるのが、IMU(慣性計測装置)ですね。
バイクの姿勢を知るためには、ピッチ、ロール、ヨーの3つの回転軸を検知しなくてはいけません。
参照:ヤマハ
- ピッチ:左右方向の軸を中心に回転する
- ロール:前後方向の軸を中心に回転する
- ヨー:上下方向の軸を中心に回転する
上記の軸の角度と加速度をIMUで検知することで、バイクの正確な姿勢を知ることができるわけです。
世界のトップシェアはボッシュの5軸センサー
世界中の最新バイクにIMUが搭載されていますが、その大部分がドイツの自動車部品メーカーのボッシュ製となっています。
ボッシュが開発したMM5.10は、ロールとヨーの角度、ピッチ、ロール、ヨーの加速度を検知し、ピッチ角度は演算で検出する5軸センサーです。
このセンサーから得た情報によって、トラクションコントロールやウイリーコントロール、コーナリングABS、電子制御サスペンションなどが作動します。わずか40gと軽量なので、どんなバイクにも搭載することができます。
世界中のバイクメーカーに納入されており、BMWやドゥカティ、ホンダ、カワサキなどが採用していますね。
最新のIMUは6軸センサー
IMUはボッシュの独壇場でしたが、2015年にヤマハが独自にIMUを開発します。ピッチ、ロール、ヨーの角度・加速度を全て検出する6軸センサーで、ボッシュの5軸センサーよりも高性能なものですね。
1秒間に125回の高速演算を行うことで、リアルタイムにバイクの挙動を検知することができるわけです。なので、情報がより正確に検出できるようになり、きめ細やかな制御によって上質な乗り心地を実現することができます。
この6軸IMUは、YZF-R1に搭載されて世界中で話題となりました。
ボッシュもこれに対抗し、2017年に6軸センサーを開発します。どんどんセンサーの精度が向上していますし、それに伴って他の電子制御も進化していくはずです。
電子制御が進化しすぎるとバイクの楽しさが半減する恐れもある
技術が進化してバイクの性能も向上し続けていますが、それに伴ってバイクの楽しさが無くなってしまうというデメリットもあります。
なぜなら、コンピューターによる自動制御が進むことで、ライダーの技術が関係なくなってくるからですね。バイクにまたがってアクセルをひねるだけで、何の支障もなく走行できてしまいます。
「ホンダライディングアシスト」という転倒防止の技術も開発されているので、ゆくゆくはバイクも自動運転になるかもしれません。
本来であれば、立ちごけや転倒などを繰り返してスキルが上達していくのですが、そういったものが無いとライダーとして成長できませんね。
河川敷などで八の字やスラロームの練習をするといったことも無くなってしまうでしょう。バイクが単なる乗り物になってしまうと、少し物足りなさを感じてしまうはずです。
バイクに乗るのが簡単になると間口は広がるかもしれませんが、自分で操る感覚を得たい人は楽しくありません。
実際、モータースポーツの世界では、電子制御によってドライバーの技術差が無くなってしまうので、トラクションコントロールなどを禁止するレースなどもあるようです。
なので、バイクに電子制御を搭載することに、否定的な意見を言う人も増えています。
