バイクのトラクションコントロールは効果ある?よく分かるTCSの仕組みについて
最近のバイクには、色々な電子制御のシステムが搭載されるようになりました。ABSなどは定番となっていて、原付二種などのエントリーモデルにも採用するモデルが増えていますよね。
上級クラスのスポーツバイクには、トラクションコントロールなども搭載されています。リアタイヤの空転を抑えるためのシステムで、コーナリング時などのスピンを防ぐ効果があるわけです。
モトGPなどのレースでも使われる技術なので、高いレベルの走行には欠かすことができませんね。ここでは、トラクションコントロールの仕組みについて解説をしていきます。
トラクションコントロール(TCS)とは何か?
そもそもトラクションとは、タイヤが地面を蹴る力のことを指します。タイヤと地面との間には摩擦があるため、エンジンで発生した力でタイヤを回すことで走行することができるんですね。
しかし、タイヤの駆動力が地面との摩擦力を超えてしまうと、ホイールがスピンすることになります。勢いよくアクセルを開けすぎることで、タイヤが空転してしまうわけですね。
大排気量のスポーツバイクは、パワーがありすぎるために簡単に後輪がスピンしてしまいます。少ししかアクセルを開けていなくても、すぐにホイールスピンしてしまうでしょう。
それを防ぐために、トラクションコントロールがあります。仕組みとしては、センサーが前後ホイールの回転差を検知して、コンピュータ制御でリアタイヤが空転するのを抑制するわけです。
具体的には、ECU(エンジンコントロールユニット)が、点火タイミングや燃料噴射量、スロットルバルブ開度を調節して、パワーを抑えるというシステムとなっています。
これによって、発進・加速時に適切なトラクションを掛けることができ、スムーズに走行できるようになりますね。
また、ハイエンドのスポーツバイクには、IMU(慣性計測装置)と組み合わせることで、バンク角なども考慮して繊細な制御をするシステムもあります。
安全性や走行性能を高めるためのもの
トラクションコントロールを搭載する目的は、大きく分けて2つあります。
- 車体が滑るのを防止して安全性を高めるもの
- エンジンパワーを効率良く使って走行性能を高めるもの
大型のアドベンチャーバイクやスポーツツアラーなどは、走行時の安全性を高めるためにTCSを搭載していますね。
悪路などを走行するときには、スタックしてリアタイヤが空転したりします。すると、バランスを崩して転倒するといったことになるでしょう。
また、高速走行時に路面が濡れていたりすると、タイヤが滑ることもあり得ます。そういった場合でも、TCSが検知してスリップを防止する働きがあるわけです。
このように、走行時の安全性・快適性を高めるためにTCSが使われたりします。
一方、スーパースポーツなどでは、走行性能を追求する目的でTCSを採用することが多いです。アクセルを大きく空けた時にスリップしてしまうと、エンジンパワーをロスすることになります。
そこで、TCSでタイヤの空転を防止することで、駆動力を100%地面に伝えることができるようになるわけです。
IMU(慣性計測装置)などと連動して、バイクの挙動に合わせてトラクションを調整するモデルもありますね。常に最適なトラクションを掛けることで、エンジン性能を最大限に活かすことができます。
トラクションコントロールは必要なのか?
一部のライダーの間では、トラクションコントロールは必要ないという声があります。バイクの挙動が電子制御になることで、自分で操るという楽しさが無くなってしまうという理由からです。
自分でアクセル開度を調節して走るのが楽しかったりするので、それが自動制御になってしまうと物足りなさを感じてしまいます。また、何度かスリップして学習しないと、ライディングスキルが上達しません。
実際に、モータースポーツの世界では、電子制御があると面白さに欠けるため、TCSの使用を禁止しているレースもあります。
でも、どれだけスキルに自信がある人でも、TCSはあった方が良いです。ベテランライダーでも、予期せぬ状況に陥った場合に、正しい判断ができなくなることがあるからですね。
自分の力を過信していると、バイクで転倒して歩行者を巻き込んだり、対向車と衝突して大事故になってしまうでしょう。
たとえば、ツーリングなどで初めての土地を走るときには、急に路面が荒れて焦ってしまうことがあります。夜道などでは、道路にオイルが散乱していても気づきませんし、冬だと凍結しているかもしれません。
そういった予想外の状況であっても、TCSがあるとコンピュータ制御によって転倒することを防ぐことができます。安全に走行するためには、トラクションコントロールは必要だといえるでしょう。
以上、トラクションコントロールの仕組みについて解説をしました。
非常に安全性が高いですから、スーパースポーツを購入するときにはTCSの有無を確認してください。高価なシステムなので高級バイクにしか搭載されていませんが、今後はエントリーモデルにも採用されていくかもしれません。